東京大学 物性研究所極限コヒーレント光科学研究センター板谷研究室
波長2 μm帯の赤外極短パルスOPA光源の論文が、Opt. Expressに掲載されました。
波長2.1 μm帯の光パラメトリック増幅光源を開発し、非常に位相安定かつ高繰り返し(100 kHz)での赤外極短パルス発生に成功しました。得られたパルス幅は16.4 fsで、光電場の2.3周期に相当します。従来型のTi:sapphireレーザーではなく、高平均出力・高繰り返しという特徴をもったYb:KGWレーザーを励起源とすることで、従来型のTi:sapphireレーザー(繰り返し1 kHz)を超える出力(平均出力3 W)を得ました。波長2 μm帯の光パラメトリック増幅器は、平均出力 1 kW級のYb固体レーザーを励起源とすることによりさらに二桁程度の高出力化が可能であるため、次世代極短パルス光源につながる重要な成果といえます。今後、開発された光源をスケールアップすることにより、高いフォトンフラックスかつ「水の窓」領域を超える軟X線アト秒パルス発生が可能になり、さまざまな軟X線応用が可能になると考えられます。
Takayuki Kurihara, Tianqi Yang, Tomoya Mizuno, Teruto Kanai, and Jiro Itatan, "Highly CEP-stable optical parametric amplifier at 2 μm with a few-cycle duration and 100 kHz repetition rate," Opt. Exp. 31 (7), 11649-11658 (2023).
[https://doi.org/10.1364/OE.481126]
(上写真) 開発途中のOPA光源(2021年4月)。
(左図) シード光があるときの光パラメトリック増幅器出力のスペクトル揺らぎの相関、(右図) シード光がない場合のスペクトル揺らぎ相関。