東京大学　物性研究所極限コヒーレント光科学研究センター板谷研究室

超高速軟X線分光による分子の開環反応の実時間観測に関する論文が、PCCPに掲載されました。

リング状分子1,3-シクロヘキサジエン（CHD）が化学反応の基本法則の一つであるウッドワード・ホフマン則に従い開環する過程を、フェムト秒軟X線吸収分光により解明しました。CHD中の結合が切れる際、リング面外に飛び出ている C-H 結合の捻じれる方向は逆旋方向と同旋方向の二つあり、ウッドワード・ホフマン則はその方向を予言します。フェムト秒軟X線吸収分光と精密な量子化学計算を比較することにより、化学反応の過程でも、分子のねじれの向きがW-H則の予言と一致することを実証しました

本研究は、北海道大学の関川太郎准教授、齊田謙一郎特任助教、武次徹也教授との共同研究によるものです。

T. Sekikawa, N. Saito, Y. Kurimoto, N. Ishii, T. Mizuno, T. Kanai, J. Itatani, K. Saita, and T. Taketsugu, “Real-time observation of the Woodward-Hoffmann rule for 1,3-cyclohexadiene by femtosecond soft X-ray transient absorption.” Phys. Chem. Chem. Phys., published online.

[https://doi.org/10.1039/d2cp05268g]  [北大プレスリリース]  [物性研News]

（図）a)1,3-シクロヘキサジエンの開環反応、b) 考えられる二通りの分子の「ねじれ」、c) 異なる励起波長に対応した化学反応の経路図。