東京大学 物性研究所極限コヒーレント光科学研究センター板谷研究室
アト秒軟X線吸収分光の実験がOpticaに掲載されました。
高次高調波パルスを用いたアト秒ポンプ・プローブ分光は、現在、最も速い物理現象をとらえることができる実験手法として知られています。アト秒ポンプ・プローブ分光では、高次高調波の光子エネルギーを、各元素の吸収端に調整することで、特定の元素のダイナミクスを追跡することが可能です。しかし、高次高調波は典型的には100 eV以下であり、窒素(吸収端400 eV)や酸素(吸収端543 eV)といった重要な元素の吸収端におけるポンプ・プローブ分光を行うことは従来困難でした。本研究では、高強度の赤外レーザーを用いて、光子エネルギー400 eVの高次高調波を発生させ、窒素の吸収端におけるアト秒ポンプ・プローブ吸収分光に世界で初めて成功し、一酸化窒素分子の光イオン化、およびその後の分子振動・回転のダイナミクスを統一的にとらえました。本研究で実証された手法は、窒素が関連する光触媒反応等、光化学反応の素過程の理解に寄与すると期待されます。また、本実験はアト秒精度の軟X線吸収分光では、世界最短波長での実験となります。
Nariyuki Saito, Hiroki Sannohe, Nobuhisa Ishii, Teruto Kanai, Nobuhiro Kosugi, Yi Wu, Andrew Chew, Seunghwoi Han, Zenghu Chang, and Jiro Itatani, "Real-time observation of electronic, vibrational, and rotational dynamics in nitric oxide with attosecond soft x-ray pulses at 400 eV", Optica 6, 1542-1546 (2019).